電力自由化とは?簡単・わかりやすく仕組みを解説

電力自由化が始まって皆さんの周りにも電力会社を乗り換えている人がいることと思います。

でも、そもそもなぜ電力自由化が必要だったのか、電力自由化によって私たち一般市民にはどんな良いことがあるのでしょうか?

電力自由化とはどのようなものなのか、その仕組みや電力自由化の知っておきたいメリット、注意点などをわかりやすく解説します。


もくじ

日本の電力事業の歴史と背景

日本は電力の供給がとても安定していて、スイッチを入れれば電気がつくのは当たり前ですよね。そして、電気の販売元は私たちが「東京電力」などと呼んでいる地域電力会社に限られていました。

▼地域電力会社10社
北海道電力、東北電力、東京電力、北陸電力、中部電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力

普段はあまり気にせずに生活しているかもしれませんが、この状態は10社による電気の独占販売と言える状況です。

日本の電力業界はいつからこうなったのでしょうか?

日本初の電力会社は「東京電灯会社」

日本の電力のおこりからで電力自由化までの流れを簡単にご紹介します。

日本に初めて誕生した電力事業者は1886年に設立された「東京電灯会社(後の東京電力)」です。136年も前に民間の電力会社があったんですね。

翌年には名古屋電灯、神戸電灯、京都電灯、大阪電灯が相次いで設立され、東京電灯も第二電灯局を作り、日本初の火力発電所も誕生しました。

家庭向けの配電も1887年に始まっています。その後日本は戦争に入るのですが、軍需もあったことで電力事業はさらに発展し、東京市のすべての家庭に電灯が普及し工場でも電化が進みます。

太平洋戦争が始まったのが1941年ですが、その直前の1938年には電力管理が国家体制で行われることになりました。この時に設立されたのが「日本発送電」という国営会社です。

ここで1度、電力事業は民間の運営から国の運営に変わったわけです。

戦争が終わると日本発送電はGHQによって民営化され、1950年に沖縄電力を除く9つの電力会社に分解されることになります。

当時GHQは日本の様々な体制の解体を要求したのですが、国営事業だった電力会社もその対象になったのです。

ライフラインでもある電力は地域に安定供給することが何よりも大切なので、地域に1社の9社の形で独占編成されました。これが現在の地域電力会社で「9電力体制」と呼ばれるものです。

ここから10電力体制(沖縄電力は1872年設立)によって独占的供給は最近まで続いていました。

電気の安定供給は戦後の不安定な状態から高度経済成長を経た今日の日本を間違いなく支えてきました。

しかし時代も変わり電力業界にも競争原理を導入して経営効率化を促すべきなどの見方が強まってきます。

これを受けて1995年から段階的に法整備が行われ、2016年4月1日の「電力の小売全面自由化」に至り個人でも自由に電力販売会社を選ぶことができるようになったのです。

電力自由化とは?何が自由になったの?

よく「電力自由化は2016年4月1日から始まった」と言われていますが、この日は電力の小売全面自由化が開始された日になります。

電力自由化が始まる前の電気の供給は地域の電力会社が行なっていました。

これは逆に言うと地域電力会社が電気を独占販売していることになり、消費者は契約する電力販売会社を選ぶことができなかったということになります。

企業側から見ても特定の会社が独占状態にあるため、電気事業に自由に参入することができませんでした。

電力自由化になったことで電力事業をやりたい企業が自由に参入できるようになりました。これにより大手10社の独占体制がなくなり、私たちも自由意志で電力販売会社を選べるようになったのです。

消費者には電気事業者を選ぶ自由があり、事業者には電気事業に参入する自由が生まれたのが電力自由化と言えます。

電力自由化の目的とは?

電力自由化には次の3つの目的があります。

1.電気の安定供給の確保
2.電気料金の抑制
3.電気利用の選択肢や企業の事業機会の拡大

<参考>:関西電力「「電力システム改革」の目的」

1.電気の安定供給の確保

平常時であればすでに安定供給が実現していると言えますが、例えば東日本大震災では、被災地の停電だけでなく、東京でも計画停電で電気が止まってしまった地域がありました。

電力自由化によって地域を超えた送電が柔軟にできるようになれば、災害時でも停電が起こりにくくなります。

2.電気料金の抑制

電力自由化によって電力事業に参入する会社が増えると、これまで電力販売とは全く無縁だった異業種からも参入が進み健全な競争が起こります。

水準よりも電気料金が高い会社は消費者から選ばれにくくなるため、電気料金の値下げにも期待できます。

実際、新電力会社が掲げる電気料金は地域電力会社よりも安いケースがとても多いです。

3.電気利用の選択肢や企業の事業機会の拡大

電力販売会社を自由に選べるようになると消費者が電力事業に求める意識も変わってきます。

例えば、

・上京してるけど地元を応援したいから地元の電力会社を利用しよう
・自分は脱原発派だから再生可能エネルギーを使いたい
・とにかく安いところがいい

など、それぞれの目的や希望に合わせた電力会社選びが可能になります。

これまで何十年も地域ごとに独占されていた電力事業に新しい風が吹くわけなので、企業にとってもイノベーションになることは間違いありません。

事業として飛躍するチャンスであり、日本経済が変わるきっかけになると言っても過言ではないのです。

電力自由化による消費者のメリット。電気はどう変わる?

電力自由化の背景や目的はわかったけど、私たち消費者にはどのようなメリットがあるのでしょうか?わかりやすく見ていきましょう。

利用したいサービスとして電力販売会社を選べます

これまでの電気料金は地域電力会社が定めた「基本料金+従量料金」で支払うことが余儀なくされていました。

電力自由化となった今では複数の電力会社が基本料金無料としていて、使った分だけ払う仕組みを提供してくれています。

日中は不在が多く電気を使うのは主に夜という人には夜間の電力使用が多い人向けのプランもあります。

電力の販売を「サービス」として行うようになったことで私たちも「ライフスタイルに合わせたサービス」として電力会社を選ぶことができるのです。

電気の地産地消ができます

地元育ちの野菜や加工品を購入したり、その地域にしか無い飲食店やサービスを積極的に利用することは地元を活気づかせる応援になります。

地域の電力会社を買うことはやはり地元企業の応援になります。

逆に、自分の故郷を応援する意味で遠くの電力販売会社と契約をすることも可能です。

例えば、東京に住んでいながら、電気は九州電力の「九電未来エナジー」を利用するといったことも可能なのです。

利用者にとっては生活に不可欠な電気ですが、購入する会社を選ぶことで地域・地元経済の応援ができることは市民全員が知っておくべきメリットでしょう。

環境に優しい電力を選ぶこともできます

電力自由化によってサービスとして電力販売会社を選ぶことができるようになったことをお伝えしましたが、ここで改めて地球環境についても考えてみませんか?

これまでは、個人的には原子力発電所には反対でも原発で発電している地域電力会社に頼るしか方法がありませんでした。しかし今なら再生可能エネルギーの開発に力を入れている電力プランを選ぶことも可能です。

毎日使う電気から地球環境の維持に積極的に参加できるのも、電力自由化がもたらす新しい社会のあり方です。

簡単に乗り換えができます

電力会社の乗り換えはとても簡単で、基本的には利用したい電力会社に申し込みをするだけでOKです。現在契約している電力会社に解約連絡をする必要もないんです。

新電力会社から別の新電力会社に乗り換える際も同じで、解約手続きは不要になります。

電力とガスをセットにしていたり、インターネット回線とセットで契約してる場合などは例外になりますが電力会社の乗り換えだけであればインターネットで新電力会社に申し込みをするだけなのでとても簡単です!

電力自由化にはデメリットもあるの?

個人、経済、地球環境など様々なところでメリットを生み出した電力自由化ですが、デメリットはないのでしょうか?

みんなが不安に感じることがあるとしたら、
・電力供給が不安定になることはないの?
・新電力会社が事業をやめたらうちの電気はどうなるの?
というところだと思います。

電力供給が不安定になることはないの?

地域電力会社から新電力会社に乗り換えることによって電力供給が不安定になることはありません。

次の項目の「新電力会社の電力供給の仕組み。停電が増えたりしない?」で詳しく説明しますが、送電は今までと変わらず地域電力会社が行いますので、停電が増えるようなことは決してありません。

新電力会社が事業をやめたらうちの電気はどうなるの?

ほとんどの新電力会社はもともと別の事業を行なっている会社ですので、電力販売で採算が取れないとなったら電力販売事業から撤退することも考えられます。

実際、2021年4月に存在した新電力会社約700社のうち、31社(約4%)が廃業・倒産により電力事業を取りやめています。

自分が選んだ電力会社が廃業したら電気が急に止まってしまうのかというと、そんなことはありません。

電力自由化には「新電力会社が事業継続できなくなってしまった場合は、地域の電力会社が代わりに電力供給を行うこと」という約束があるので、電気がピタッと止まることは絶対にないのです。

地域電力会社に戻すこともできますし別の新電力会社と契約することも可能です。

電力自由化にはデメリットもあるのですが、きちんと対応策が取られているので安心してください。筆者はすでに2回電力会社を乗り換えていますが、これが原因で停電したり電力が不安定だと感じたことは1度もありません。

新電力会社が行うことはあくまでも「電力の小売業」で、発電事業や送電事業は地域電力会社や指定業者がこれまでどおり行います。

新電力会社を選ぶポイントを簡単に教えて!

電力自由化ではひとりひとりが本当に自由に電力会社を選ぶという意思表示ができるようになりました。でも、そう言われても自分に合っている電力会社がどこかなんてわからない・・・と思うのは当然のことです。

本当に自分に合っている新電力会社はどうやって選べば良いのでしょうか?

ここで重要なのは、自分に合っている電力会社はライフスタイルとライフステージで変わるということ。これから先、1社だけを使い続ける必要はないのです。

⇒新電力会社おすすめランキング!電気料金比較!お得に乗り換え!

「今の自分」に合っている電力会社を選ぶこと

電力会社様々なプランを提供してくれています。一人暮らしであまり電気を使わない生活をしている間はA社が良かったけど結婚して2人暮らしになって車も買ったからガソリンも安くなるB社がいい、子供が生まれてマイホームを持ったからオール電化向けのプランがあるC社にする・・・といった感じでその時々で自分の生活に合っている会社を自由に選ぶことが賢い消費者でいるコツと言えるでしょう。

現在の電力使用量を把握しておくこと

ランキングサイトで上位の電力会社を選べば間違いないだろうと思ってしまうかもしれませんが、最初にやっておくべきことは自分の電力使用量を知ることです。

地域電力会社の電力量料金は段階制になっていて、たくさん使うと単価が上がるようになっています。

<参考>東京電力の従量料金(従量電灯B)

電力使用量 東京電力
~120kWh(第1段階料金) 19.78円
121~300kWh(第2段階料金) 26.48円
301kWh~(第3段階料金) 30.57円

 

電気をあまり使わない人は第1段階が安いプランが良いですが、たくさん使うなら第3段階が安いと助かりますよね。

自分がいつも使っている電力量によって選ぶべき電力会社が違ってくるので、まずは状況を正確に把握することが大切なのです。

供給エリアも確認しておこう

電力会社の中には地域を限定して電力販売を行なっている会社もあります。

例えば「ENEOSでんき」は全国(沖縄と一部地域、離島を除く)ですが、「CDエナジーダイレクト」は東京電力エリア限定になります。

エリア外の電力会社には申し込むことができません。

引越しの予定がある場合は引越し先が対応エリアかどうかということと、どのような手続きが必要になるかも事前に確認しておくと安心です。

解約金がかかることもあります

これまでは電力会社を変えるタイミングといえば引越しで電力会社の管轄が変わるくらいでしたので、解約金や違約金はありませんでした。

しかし、新電力会社によっては解約金を設定しているところがあります。

例えばENEOSでんきの「にねんとく2割(とくとく割)」です。にねんとく2割は2年間使い続けることを約束の上契約することで毎月の電気料金を割引するというサービスなので、更新月以外のタイミングで解約すると1,100円の解約手数料がかかってしまいます。

eoでんき」は1年間を最低利用期間としていて、1年以内に解約をすると3,000円(税抜)の解約積算金が発生します。(現在はキャンペーン期間中のため解約清算金はありません)

電力会社はそう頻繁に変えることはないと思いますが、引越しが多い方は解約時のペナルティの有無についても注意しておきましょう。

電力自由化のよくある質問

最後に電力自由化のよくある質問をQ&Aでまとめます。

電力会社を変えたら工事が必要になる?

電力会社を乗り換えることによって工事が必要になる主なケースとしては「スマートメーターの設置」があります。すでに設置されているご家庭であれば工事が行われることはありません。

スマートメーターは電力使用量を自動的に計算して電力会社に知らせてくれる便利な機械です。

これまでは月の電力使用量をチェックするために検針員さんが個人宅に来て電力メーターをチェックするという方法がとられていましたが、スマートメーターは電力使用量を30分ごとに計測して電力会社に通知するため訪問作業が不要になります。

人件費の削減にもなりますし、防犯面でも安心ではないでしょうか?

なお、スマートメーター切り替え工事が必要な場合でも費用は無料で、工事日の立会いも不要です。

本当に停電が増えることはないの?安定供給してもらえる?

自分が選ぶ電力会社やプランの内容によって電力供給が不安定になって電気がついたり消えたりしたら困りますよね。

災害時の電力復旧はどこが行うの?停電時の連絡先は?

新電力会社に乗り換えたことで、自然災害で電線が切れたり電柱が倒れてしまった場合に復旧が遅れてしまうのは困りますが心配ありません。

地域の電力会社が対応することになっていますので契約する電力会社によって対応が違ってくるということはないのです。

停電の原因は自宅内にある場合と自宅外(送配電設備)のどちらかになります。

停電してしまったらまずはブレーカーをチェックして異常がないことを確認してから契約している電力会社に問い合わせます。

送配電設備に異常がある場合は地域電力会社が対応を行いますので、「地域電力会社と契約している隣は電気がついているのにうちだけずっと停電したまま・・・」というようなことはありません。

賃貸アパート、賃貸アパート、借家住まいです。電力会社の切り替えはできますか?

自分が借りている部屋で、自分で電力会社と契約していれば乗り換え可能です。ただし、建物全体で一括契約している場合などは乗り換えできないこともあります。

わからない場合は管理会社に確認してみると良いでしょう。

⇒一人暮らしにおすすめの電力会社一覧【賃貸もOK】

分譲マンションに住んでいます。新電力会社に乗り換えできますか?

分譲マンションの場合も個人で電力会社と契約していれば乗り換え可能です。

管理組合などを通して一括契約している場合は乗り換えできないこともありますので管理組合に相談してみてください。

新電力会社が倒産したら電気はどうなりますか?

新電力会社が倒産したり電力事業から撤退することは実際にありますが、すぐに電気が使えなくなることはありません。

利用者は新たな電力会社を探して契約を結ばなければいけませんが、利用したい会社が見つかるまでの間は地域電力会社から供給を受けることになります。

どの電力会社と契約をしても、停電が増えたり倒産時に電気がピタッと止まってしまうようなことは決してありませんので安心して乗り換え先を探してみてくださいね!

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